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松多の研究

  

活断層とは何か

 活断層はなんなのか?は松多の卒論から続く研究のテーマです。日本の活断層のほとんどは、変動地形学の知見によって発見されてきました。活断層の発見は外的営力(水などの影響)で形成される地形では説明できない地形を探すことから始まります。したがって、地形学の広範な知識を必要とします。松多の指導教官の先生は「調査対象とする断層を誰もやっていないからと選ぶのではなく、既存の研究があっても典型的な活断層を最初に調査する方が、活断層の本質を見抜く目と考える思考が身に着く」との考えから、松多に日本で最も活動的な活断層である糸静線中部の牛伏寺断層近傍の調査を勧めました。卒論では変動地形学的なアプローチをしましたが、地表だけから得られる情報の限界も感じ、修士論文や博士論文では変動地形学に加えて物理探査を用いた地下構造探査を併用し、活断層による地表の変形と地下の断層の形状や動きの関係について調べました。

 プレート境界も活断層です。しかし、プレート境界は一般には末端がなく活断層によって周囲を縁取られています。しかし、内陸の活断層には末端があり長さがあります。活断層が活動を続けると、その末端部はどうなってしまうのでしょうか?プレート境界だけでなく日本のようなプレートの境界付近ではプレート内部にも力がかかります。活断層周辺に力がかかりひずみが蓄積されます。ひずみが限界まで達すると活断層が動くことで歪が解放されます。この一連のプロセスを解明することが必要です。そこで、測地学的データを取り入れながら、活断層に寄らない地殻の変形や活断層周辺の歪の蓄積についても研究をしています。特に、台湾東部のクリープ(日常的にずるずるとずれている)している断層周辺でどのようにひずみが蓄積し、地震が起きているのかや、2014年に起きた神城断層地震の解明や、中部日本の活断層にどのようなすべり分布があるかなどを調査しています。

 これらの活断層の研究を通して、上部地殻(日本列島)の変形がどのように起きているのか、起きてきたのかを、大地形から考察していくことを松多は目指しています。特に中国山地や吉備高原の発達史や中央構造線周辺の地殻変動はヒントを与えてくれるかもしれません。

災害の地理学

 日本に帰国後、東日本大震災が発生しました。日本地理学会のメンバーと一緒に津波被災地域のマッピングをすることになり、その後現地にたびたび訪れることになります。そこで、自然現象の大きさと人的被害の大きさが必ずしも一致しないことをしります。これは、災害が自然現象としての側面だけではなく社会現象の側面を有することを示しています。そこで、自然現象が災害にいたるプロセスを解明することが災害を軽減するために最も重要だと考えるようになりました。こののち、活断層近傍によるズレによる被害と地震の揺れによる被害とを分別すること、地域によって災害にいたる自然現象や社会現象が異なることなどに興味を持って研究をしています。

自然地理学のとらえ方

 台湾では1999年に発生した集集地震の地表地震断層の痕跡をいくつもの場所で保存しています。しかし、その保存方法は多様でそれぞれの地域の被害の状況などによって大きく異なる傾向があることに興味を持ちました。災害の記憶の継承の差異は、その地域が持つ自然現象の価値観に結び付きます。これは、災害に限ったことではありません。普段何気なく存在するものに新たな価値づけをすることで、新しい価値が生まれます。これは、自然保護の考え方や、地域振興や地域教育に結び付く要素で、広くは文化の創造、伝統の継承、信仰や風俗などにも関連すると思います。このような人が自然をどのように捉えてきたのかを解明していくことにも興味があります。

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