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自然地理学とは

 自然地理学が社会科で学ぶ理由を考えてみます。社会科で学ぶ、経済、政治、法律、歴史、文化など我々の周りで起きていることは、その地域で人々が生きた結果です。人々が活動した舞台が自然環境であり、自然環境が異なればそこでの生活が異なるので、歴史も文化も経済も社会現象すべてが異なってくるのです。したがって、自然地理学を学ぶことなく、社会を理解することはありえないと言えます。

 このように、自然地理学には自然環境と人のかかわり方を考える学問という側面がありますが、それとは別にそもそも現在目にする自然環境がどのように形成されたかを解明する側面があります。これは、今も舞台自体がどのように変化していることを知ることになります。それは、自然現象だけでなく、人為的な影響もあります。地球の歴史を探る点では地質と似ていますが、第四紀後期という地形にまだ痕跡が残っている地球の歴史を探ることになります。

 自然地理学を学ぶことで、その土地がどのように形成され、どのように変化しようとしているのかを知り、それを人はどのように活用してきたのかを見抜く目を持つことができます。この能力は、例えば、災害で考えてみます。そもそも、災害は土地が変化する場所に人の社会があるときに自然現象と社会が出会って災害になります。自然地理学が分かれば、その場所でどのような災害が起こるのか、昔の人はそれとどう付き合ってきたのかを想像することができ、自分で自分の身を守る判断ができます。地域振興であれば、成功した地域の真似をするのではなく、自分の地域によそとは違うどんな特徴があり活かしてきたのかを知ることで、日常生活では気が付きにくい地域の価値を見出すことができる可能性があります。

 では、地理学の研究とはどのようなものでしょうか?地理学は空間の科学です。これは時間軸で理解する歴史学と大きく異なることです。我々が思考をしたり、主張や議論をしたりする言語には前後があります。したがって、歴史のように時間軸に沿って説明しやすいことは言語との親和性が良いわけです。ところが空間の学問である地理学はそれが難しいです。ここで有効なのは、空間の言語である地図です。視覚でとらえることができる地図は空間を表現する強力なツールです。最近では、この地図を自由自在にあやつり表現するGISが有力なツールとなっています。地理学ではこのような技術を駆使しながら、地域を比較しながら、共通点と異なる点をあぶりだし、その地域を理解していくことが基本的な考え方になります。地理学の研究は地図などを駆使しますが、深くその地域に入り込むことでその地域を理解するための研究もありますが、他の地域との比較を意識してその地域の本質をあぶりだす研究もあります。私は後者の研究の方が面白いと思っています。

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